地主・大家さんって、普段どんなことをやっているの? 調布深大寺東町の内野さんに話を聞いてきました

地主・大家さんって、普段どんなことをやっているの?
調布深大寺東町の内野さんに話を聞いてきました


Posted on 2017-12-4



Patchwork Chofuでは、まちをつくる人として、地主・大家さんの取り組みに着目して、インタビューを行なっています。

※この記事は、調布みつぎ不動産研究所のご協力のもと作成させていただきました。

【記事 / 写真】: 薩川 良弥
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現在、調布駅前の開発も進んできて、調布の期待値はどんどん上がってきていると巷で耳にします。


9月末にオープンした大型商業施設トリエ京王調布。調布駅前も人の流れができて、賑わいが出てきました

駅前は盛り上がる一方で、駅から離れた地域でも、豊かな暮らしを実現するために日々奮闘されている方がいます。
今回はそんな中心市街地から離れた調布の少し外れにある地域のお話です。

何気ない日常の風景も、どこかの誰かがつくってくれているとしたら

設置された信号機、近くにできたスーパー、ゴミの落ちていない道…
意識しなければ見過ごしてしまいそうな平和な街の風景も、街を良くしようと奮闘している人がいるからこそ。
今回の取材を通して僕はそんなこと感じました。
地主さんや大家さんが普段何をされ、どんな思いでいるのか...。



道を安全に渡ることができるのも、誰かの努力の形なのかもしれません

今回は、深大寺東町の一角に土地を持ち、建物を建てて大家として活躍する内野長治さんにお話を伺ってきました。

深大寺東町とは

深大寺東町は、調布駅から徒歩30分ほどの地域です。
坂の上にある主に戸建ての住宅街が広がっているエリアで、そこの一角にスーパーマーケット、ドラックストア、衣料品、カフェなど商店が集積する場所があります。


大型のスーパーやドラックストア


テラス付きのカフェもあります


内野さんは、このエリアにある建物を数カ所、所有されています。
今回は、中心市街地から離れた住宅地の小さなエリアで、まちづくりの当事者として活動している内野さんの素顔に迫っていきたいと思います。


税理士事務所の代表と並行し、不動産運用もされている内野さん

薩川 :
早速ですが、内野さんの生い立ちからお聞きしたいと思います。
内野さんはこの深大寺東町で生まれて育ったのですか?

内野さん :

生まれたのは今の場所(調布)ですが、小学2年~4年までのまる3年間は、稲城にある母の姉の所でお世話になってました。また5年生の時に調布に戻って来たので、ほとんどこちらで過ごしてますね。私は三兄弟の次男です。


薩川 :
ではほとんど
深大寺東町で過ごされているというわけですね。昔と今ではこのあたりの風景もきっと全然違いますよね。

内野さん :

はい。昔はこの辺は全部畑か田んぼ、あとは林。まさに田園地帯で他は特に何もない地域でしたね。


税理士と不動産と

薩川 :
以前からこの辺(深大寺東町あたり)の土地を持ってらっしゃったのですか?

内野さん :

そうですね。先祖代々私の家は農業を生業としてきました。戦前は家業で蚕を育てて売ってたそうなんですが、今は無くなってます。私の本業は税理士。不動産に関しては家族経営の形をとってます。


薩川 :
不動産の運用を内野さんが行うことになったきっかけを教えてください。

内野さん :

家は父が体が弱く、おまけに不動産の運用がうまくできてなくて、昔はとても貧しかったんです。お金が無くなっては売れる土地を売ってたんです。


薩川 :
そうだったんですね。土地持ちの方=裕福というイメージがあります。

内野さん :

ちゃんと運用できればそうですね。それで、ある日体の弱い父親が、私に運用をさせてくれるという話になって。そこから勉強して、不動産関係のセミナーや勉強会に足繁く通ったりしていました。


薩川 :
本業の税理士の仕事は続けながらですか。

内野さん :

はい。税理士の仕事はおかげさまで順調でした。


薩川 :
だからこそ新しいこと(不動産の運用)にチャレンジできたのですね。さすがです。

内野さん :

ありがとうございます。不動産も運用して10年、20年と経つに従って、生活のレベルも上がってきました。本当にありがたいことです。




薩川 :
税金の知識が不動産の運用に役立ってるということがあるのではないですか?

内野さん :

その通りです。税金のことが不動産のことにつながることがあるし、その逆も然り。両方の仕事が表裏一体なんです。


薩川 :
不動産だけでなく、税金のプロでもあるということが、内野さんの強みになっているんですね。先ほど、不動産は家族経営の形をとっているとおっしゃってましたが、なぜその様な形を取っているのでしょうか?

内野さん :

なんでもそうなんですけど、事業って、大きくなるに従って一人歩きしちゃうでしょ。
自分の意思とは逆であっても、それをしなくちゃならなくなったりする。それは不本意なことですよね。


薩川 :
はい。本質を見失わない様にビジネスするのは大変なことだと思います。

内野さん :

あとは、今でさえ親子や兄弟間で、(不動産運用の方法について)話がまとまらないことがあります。その問題が、事業が大きくなるともっと大きくなってしまうだろうという懸念もあります。


薩川 :
必ずしも合理的な理由だけで話がまとまるということでは無いですもんね。関わる人の理想とする形は様々で。不動産はそういう難しさがあると思います。
内野さんは、この場所に暮らす当事者として、住民目線でこの地域のことを考えている。だからこそ「住みやすい地域をつくる」という軸からブレないでいられるのですね。

内野さん :

そうですね。利益だけを追求すると軸がブレてしまうかもしれない。
私は「子どもや孫世代が住みやすい街をつくる」と考えを軸にしています。その自分が大事だと思う部分を守りたいんです。




暮らしやすい地域をつくる仕事とは

薩川 :
深大寺東町エリアの土地を運用して、暮らしやすいエリアを作ろうと思われる様になった、きっかけや経緯などを教えてください。

内野さん :

この場所は、調布駅から来るにも不便で、高い坂を登らなければいけません。この辺に住む方も高齢化してきて、本当に生活が大変なんです。



高い坂を登らなければ深大寺東町には行くことができない

内野さん :

以前はスーパーに買い物に行くにも、坂を降りなくてはいけなかった。特に高齢者の方は買い物にも気軽に行くことができない状況です。そんな声を周りから聞いて、絶対にやらなきゃダメだって思って、行動に踏み切りました。
坂の上だけで、せめて最低限の暮らしができるようにコンパクトシティ※注の様な街に整えないといけないと思ったんです。


※注 コンパクトシティ : 生活上必要な機能を一定範囲に集め、効率的な生活環境をつくること。


薩川 :
なるほど。

内野さん :

もともと父が持っている畑があったのですが、その畑の周りにある農地の持ち主が、その農地を子どもに相続するという話を聞きました。相続される子どもは農業を営まない方だと聞き、その土地は活用されないのではないかと思って、譲って(売って)もらおうと相談しにいきました。


薩川 :
その時は、既に今のように暮らしやすいエリアを作ろうという構想がおありだったんですね。

内野さん :

今の形を100%想像できていたわけではないですけどね。
それで全部で1500坪の土地があったのですが、その内、約1150坪譲ってもらいました。お金にして、合計で8億5000万円くらいの借金をしました。


薩川 :
は、8億5000万円ですか…。その土地に
建物を建てて貸したりして運用して行くわけですね。

内野さん :

はい。モデルルームを建てたいという業者に貸したり、ショッピングストアや100台収容の駐車場を作ったり…運用するために色々やりますよ。


薩川 :
その中で、スーパーマーケット、ドラックストアなど、暮らしに必要な施設を建てていくわけですか。


スーパーマーケットは毎日多くのお客さんで賑わっている

内野さん :

はい。でもこれも一筋縄ではいかないですね。例えば建設会社も様々なので、色々なところに話を聞きました。費用面とかなかなか折り合いが合わなくて、話が頓挫することもしばしばです。ただ諦めずにやってると、良い業者と出会えるものです。


薩川 :
中でもメディアカルビルには多くの方がいつもいらっしゃいますね。


メディカルビルには特に高齢の方が多く集まる

内野さん :

この辺は高齢の方も多いです。だからお医者様がいないこの地域にメディカルビルがどうしても欲しかった。おかげさまで繁盛してます。患者さんが多い診療科では3~4時間待ちとなってしまっているみたいです。今は内科、整形外科、歯医者、眼科等があります。あとは、できれば小児科か耳鼻科に入って欲しい。今空いているところがあるので、良い方がいたら教えてください (笑)
(募集詳細>>)


薩川 :
内野さんは、物件一つ一つの単位ではなく、エリア単位で暮らしや経済を考えていらっしゃるのが素晴らしいと思います。住む人を増やす事がゴールではなく、住む人がどう過ごすかも大事だと。

内野さん :

特に深大寺東町は、駅前とは違って分断されてしまっているエリアなので、このエリアにいる方たちが、この街だけでも暮らしていける様に、皆で盛り上げていくという視点が重要だと思うんです。


薩川 :
住民と一緒に、暮らしやすくする環境を整えていこうというわけですね。

豊かな暮らしを求めて、地域活動「へそづくりの会」の発足

薩川 :
内野さんが発足された、地域活動、「へそづくりの会」について、きっかけ、経緯などをお聞きしていければと思います。そもそも目的ってなんなのでしょうか?




webページ(※画像引用元)

内野さん :

へそづくりの会は、(※現在は調布市北部地区まちづくり推進協議会)深大寺東町を含める調布北部地区の暮らしを豊かなものにすることを目的としています。最初は、私の呼びかけで、周りの何人かが集まってくれた。それから約10年間活動を続けてます。


薩川 :
立ち上げ当初はどのようなことをやっていたのですか?

内野さん :

当初は毎月の定例会、まち歩き、ワークショップなど行なっていました。不便な街なので、理想はたくさん出るのだけど、結局何をしたらいいのか分からなかった。理想をまとめては調布市に伝えるのだけど、結局理解を得るのが難しかった。「他の地域でも困っている地域は沢山ある」ということで取り合ってはもらえない。無理もないと言えばそうなんだけど、やっぱり辛かったです。


薩川 :
なるほど。

内野さん :

あとは、近隣住民全員が賛成してくれているわけではないので、少数ですが反対意見やバッシングを受けることもあります。その嫌われ役をやらないと良い形に変わっていかないので、その役目は私がやります。だれかが悪者にならないとね。
地域の人のためにやってたらいつか還って来くると思ってやってますよ。




続けることで見えてきたもの

薩川 :
10年やってきて見えてきたことや、兆しはありますか?

内野さん :

諦めずに、色々頑張ってやって来たら活動を進める上で地域の仲間もできました。ある日、仲間に調布市で街のマスタープラン※注 を検討するための市民参加会議があるということを聞いて参加してきました。そこで理想など色々発言してきました。そうしたら、市がマスタープランに入れてくれたんです。それは大きな一歩だと思いますよ。

※注 マスタープラン : 市町村の都市計画に関する最上位の計画のこと



薩川 :
市民目線の理想を行政側に伝えるためには、"マスタープランを検討する市民参加会議に参加するべきだ"というのはとても大きな学びですよね。じゃないと調布市とも愚痴を言うだけの関係になってしまいますもんね…。
具体的には、例えばどんな活動を行われているのですか?

内野さん :

深大寺東町のバス通りが狭くて、バスが通行すると歩行者がとても危険なんです。なので歩行者が安全にバスに乗れるような施策を考えて、実行しようとしているところです。安全にバスが乗れる停留所を設けようとか、道路広げて歩道のスペースを確保してもらいたいとか、色々提言させてもらっています。



バス通りには歩道がなく、人が入る幅もない様な道もある。このままでは、歩行者やバスを待つ人が危険なので、この状況を変えようとしている。

薩川 :
子どもを持つ親の方や、高齢者の方にとっては特に重要な問題だと思います。
へそづくりの会をやってよかったこと、得たもので大きなものはなんだと思われますか?

内野さん :

へそづくりの会の月一回の定例会に、毎回多くの方が来てくれる。そういう仲間がいるのはありがたいことだと思います。やはり私一人では難しいので、助けになってくれる人が何人もいるというのは、この地域の宝だと思います。



会員募集のチラシ

何のためにまちをつくるのか。

薩川 :
それでは最後になりますが、内野さんのまちづくりに関する「欲しい未来」ってどんなものですか?

内野さん :

私は、駅から遠くて、急な坂道を登らなければならないこの地域でも、子供、孫がこの街で生まれて育ってよかったなって思ってくれる、そんな街をつくりたい。それが義務だと思ってます。
そして市民が立ち上がった時に、街は変わることができる。そう信じてやっています。


薩川 :
そのモチベーションの核って何なのでしょうか?

内野さん :

ん~、…だって、土地もお金も天国には持っていけないでしょう?笑





内野さんは、ご自身が住む土地の運用をなさっているのが特徴的で、暮らす人目線であるということを強く感じます。だからこそこの地域に暮らす方にとって良い地域になる。
この様な、まちの当事者がいて、その周りに同じようにまちを良くしようとい仲間がいる。そういう人達がいる地域なら、まちは"そこに暮らす方にとって"良くなり続けていくのだと思います。

「暮らしやすいまちをつくる」

その答えのヒントが内野さんのご活動の中にまだまだ沢山埋もれている気がしました。


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調布市北部地区まちづくり推進協議会 (へそづくりの会)
ご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。




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